● 【葛城二十八宿】第二十三経塚「妙経薬王菩薩本事品」(やくおうぼさつほんじほん)

茅原のとんど(吉祥草寺/御所市)

【妙経薬王菩薩本事品第二十三】 ※要約
 過去世において、薬王菩薩は、自分の体を生きたまま焼いたりしたと言い、それが最高の供養だと讃嘆される。(焼身自殺が最高の布施だという考えは、『法華経』とも仏教本来の思想とも異なる。) 

【日本遺産】 葛城修験(構成文化財)
  薬王菩薩本事品(第二十三経塚)、吉祥草寺、葛城一言主神社

文献

引用・抜粋文

『葛城峯中記』
(室町時代初期)
鎮永/千勝院

七十九 水越宿 屬類品第廿二
八十  水越多輪・・・水分 廿町計登、兒墓也。界那寺屋敷斗也。地主
八十一 牛頭天王 牛頭水 薬王菩薩品第廿三
八十二 大藤多輪 虵池原
八十三 金剛沙寺
八十四 大泉寺
八十五 如意寺
八十六 藤尾宿
八十七 小鷲宿
八十八 神旡多輪 妙音薩品第廿四・・・

『葛嶺雑記』
(江戸時代後期)
智航/
犬鳴山七宝龍寺

水越経塚 
 和州葛上郡関屋村の水越さわの地蔵是也 妙屬累品第二十二之地
葛城山一言主寺
 同国郡森脇村此辺五條御代官支配所
 聖護院宮御来る真言古義 本社一言主神 右に文殊十一面左に弥陀本坊不動□
 摂社は聖権現とて越の泰院師を祀る 本地不動尊
 末社 八幡 天満宮 住吉 八王子 出雲社 弁才天 神功皇后社等 此寺より茅原へ三十丁道よし
倶尸羅経塚 
 くじら村字さるめのじざうといふ所なり、妙薬王菩薩本事品第二十三之地 此辺久米路にちかし

【以下の文献より引用・抜粋】
●『葛城峯中記』は『葛城の峰と修験の道』中野榮治・著 ●『葛嶺雑記』は『葛城回峯録』犬鳴山七宝滝寺に収録

 室町時代初期の『葛城峯中記』によると、「七十九 水越宿 屬類品第廿二 八十 水越多輪・・・水分 廿町計登、兒墓也。界那寺屋敷斗也。地主 八十一 牛頭天王 牛頭水 薬王菩薩品第廿三。」と記され、水越の宿から界那寺まで、葛城山麓を縫うように歩いたのだろうか。一方、江戸時代後期の『葛嶺雑記』の頃なら、龍正寺のある名柄の集落まで下りてきたのかもしれない。龍正寺脇の交差点を北進し、国道309号線を横断してさらに進むと、葛城一言主神社鳥居があり、ここから西に向かって参道である。かつては朱塗りの木造製で、地元では「あかい鳥居」と呼ばれていたそうだが、現在は石の鳥居である。
 『古事記』下巻・雄略天皇の段に、一言主大神の記述があり、要約すると以下のとおりである。
雄略天皇が葛城山に登っていると、天皇の行幸の列にそっくりな一行を向かいの山の尾根に見かけたので、「名を名のれ」と問うと、「私は、悪い事も一言、善い事も一言で言い放つ神、葛城の一言主の大神である」と答えた。天皇はこれを聞いて恐れ畏まり、自分の太刀や弓矢をはじめ、多くの官人等の着ている衣服をも脱がせて拝礼し献上した。一言主の大神はお礼の拍手をして献上の品を受け取り、一行は山の頂きに大勢集まって、天皇を泊瀬の山の入口まで見送った。
 この故事にちなんで、大神が顕現された「神降」と伝える地に、一言主大神と幼武尊(雄略天皇)をお祀りしているのがここ一言主神社で、全国各地の一言主神を奉斎する神社の総本社でもある。一言の願いであれば何でも聞いて下さる神様として、地元では親愛を込めて「一言さん」と呼ばれている。
 現在は、山麓線(県道30号線)が文字通り葛城山麓を南北に真っ直ぐ走っているが、一言主神社から九品寺を経て第二十三経塚に至る古道は、山麓を縫うように進んでいったのではないだろうか。第二十三経塚の所在地には3説がある。
 1つ目は、「猿目の地蔵」と呼ばれている花崗岩の巨石に掘られた六地蔵である。今では、車道を遮るかのように鎮座し存在感を示している。
 2つ目は、字櫛羅の集落の一画に空き地があり、そこに建つに大きな五輪塔が経塚とされる。ここは地蔵寺跡と伝わり、江戸時代に刻まれた「ほけきやう塚」の石碑も建てられている。各講の碑伝も多く、現在、巡礼者が最も多い経塚である。
 江戸時代の『葛嶺雑記』には「くじら村字さるめのじざうといふ所なり」との記載あり、1つ目の六地蔵を指すのか、それとも2つ目の地蔵寺跡を指すのか不明である。
 3つ目は、葛城山中の界那寺(戒那寺)境内である。この山岳寺院は櫛羅の滝の西側の緩やかな傾斜地にあったとされるが、室町時代の『葛城峯中記』にこの寺院名は見られるものの、『葛嶺雑記』には記載はなくすでに荒廃していたと思われる。

【吉祥草寺】
 この地は修験道の開祖役行者神変大菩薩の出生地とされ、役行者創建と云わり、境内には産湯の井戸も残されている。平安時代前期に、理源大師が再建するなどしたが、南北朝時代(1349年)、兵火によって焼かれ、本堂は応永年間(1394〜1428年)の再建と云わる。堂内には不動明王を中心とする五大尊が本尊として祀られ、開山堂には、等身を超える木造の役行者及び前鬼後鬼坐像を祀る。この役行者像は顎髭がなく、若き頃の役小角の姿を写した貴重な作例である。
 毎年、1月14日に執り行われる「茅原の大とんど」(奈良県指定無形文化財)は、雄雌一対の高さ6mを超す巨大な松明が圧巻である。20時頃に山伏や地元区民の行列が境内に入場し本堂で祈祷、その後(20〜30後)に雄松明の恵方側から点火され、無病息災・五穀豊穣を祈願して多くの参拝客で賑わう。

 
猿目の六地蔵   薬王菩薩本事品(第二十三経塚)
 
葛城一言主神社   九品寺
 
吉祥草寺の行者堂   吉祥草寺境内の経塚
 
櫛羅の滝   二の滝(行者の滝/不動の滝)