Mountain Guide
                         くりんとの登山ガイド

           
   
 日出ヶ岳山頂から堂倉滝へ 【粟谷小屋泊】
堂倉滝

【日出ヶ岳〜堂倉小屋】
 この度、奈良県側の日出ヶ岳から下り粟谷小屋で一泊、翌日、堂倉滝まで足を伸ばして再び日出ヶ岳に返すコースを歩いた。大台ヶ原も、9月下旬だと目立った花もなく紅葉にもまだ早い。ところが、日出ヶ岳山頂からすぐの下り坂で目を奪われたのが、ツクシシャクナゲの群生。大蛇ー分岐からシオカラ谷にかけての尾根筋にもツクシシャクナゲは多いが、日出ヶ岳の方は密度が高い。翌年、ツクシシャクナゲの開花に合わせてこの場所を訪れてみると、期待通りピンクの花が咲き乱れ、マルハナバチの羽音も絶えることがなかった。
 坂を降りきったところに、ほぼブナの純林が広がる平地があり、そこでお弁当を広げた。その後も、尾根筋に「シャクナゲ平」「シャクナゲ坂」と命名されたポイントを通過しながら、山頂から3時間かけて粟谷小屋に到着する。ちなみに、ガイドマップには1時間半とあるから、ずいぶんと牛歩であったようだ。今年はどんぐりの豊作年なのか、大きく育ったミズナラのどんぐりがたくさん落ちていた。この日の目的地は、粟谷小屋であったが、すぐ近くに堂倉避難小屋があり、清潔に維持されていて、宿泊も可である。

【粟谷小屋】
 粟谷小屋は大台林道(父ヶ谷大台線)の途上にあり、尾鷲からだと車で2時間以上かかるらしい。この林道も、ここから西谷方面へは崩落等の荒れがひどく車両通行止めとなっている。夕食までには随分時間があったので、土倉古道登り口まで散策に出かけた。林道沿いには実をたわわにつけたサルナシが何本も見られ、ヤマブドウの葉もほんのり紅く染まり始めている。
 粟谷小屋は、かつて営林署の宿舎として使われていたようだが、現在はリニューアルされ山小屋として営業している。隅々まで清掃が行き届き、家主の心意気が感じられる。常連客が多いのか、食堂や談話室には、寄贈されたと思われるパネル写真などが整然と飾られている。談話室には薪ストーブ、お風呂は“槙材”の薪風呂がうれしい。今回、リーダーからヘッドランプを持参するように言われていたが、その意味がよくわからなかった。ここには電気が通っておらず 、自家発電機が止められ消灯となる。今回は貸し切り状態だったので、その後も談話室の使用は許可されたが、そこでヘッドランプが必要だったというわけだ。

 
ツクシシャクナゲ   ヒノキの巨木
 
堂倉避難小屋   粟谷小屋

【堂倉小屋〜堂倉滝】
 標高1150mの粟谷小屋から標高850mの堂倉滝まで標高差200m、ほぼ直線上に尾根を下るルートとなる。ここを折り返すわけだから少々気が重かったが、行きの下りはほぼ1時間で堂倉滝に到着した。この尾根は、それまでの植生とやや異なり、ツガ、ゴヨウマツ、ヒノキ、コウヤマキなどの針葉樹が主な構成樹となっている。足下に落ちている形の異なったまつぼっくりを見つけて歩くのも楽しい。
 堂倉滝を見つけるや否や、来てよかったと思った。結構遠くから聞こえていた川の音だが、滝の水量を見て納得できた。落差20m、滝壺も大きく深い。2004年(平成16)9月の台風21号の折には、この滝壺が土砂で埋まったと聞く。さらに、滝の前の 堂倉滝吊橋はひっくり返り、大木が引っ掛かっていたというから、吊り橋がかぶるほどの水量があったようだ。まさに想像を絶する大台ヶ原の雨量である。2014年(平成26)4月以降、全面開通に至っている。
 ちなみに、1979年(昭和54)に起こった堂倉吊橋落橋事故は、もう一つ下流に架かっていた吊橋で、責任の所在が最高裁まで争われた。以後、環境庁をはじめ行政機関は登山道の安全に神経を尖らせ、時に過度な通行禁止措置や登山道整備が行われるようになった。
 堂倉滝からUターンしての登りは、大きな荷物を預けてきたせいもあってか粟谷小屋まで1時間20分。さらに小屋から日出ヶ岳山頂まで2時間半 であった。(老若男女8人のパーティーだったため、所要時間はあくまでも目安に。)途中、計5人ほどの登山客に出会っただけで、東大台の喧噪から離れた森林の静寂を満喫できた。

 
 
 
   

 
   

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