Mountain Guide
                         くりんとの登山ガイド

           
   
 ニリンソウのお花畑 (カトラ谷・高畑道)
ニリンソウ(カトラ谷)
クリンソウ(カトラ谷)
 
ヤマシャクヤク(カトラ谷)  
 
ヤマシャクヤク(カトラ谷)   イチリンソウ(高畑谷)

 大阪府側から金剛山を登る場合、千早の金剛山登山口バス停から伸びる「千早本道」が銀座通りである。登山口には駐車場及びトイレが完備されまつまさ食堂もある。創業安永六年(1777年)という「山の豆腐」屋さんに後ろ髪をひかれながら、その前の三叉路を右へ折れると千早本道登山口にとりつく。一帯は出発する登山客と到着する登山客が行き交ういわばミニ上高地。しかし、この上高地の喧噪をすりぬけるかのように、先の三叉路を左へとり、ス〜ッと消えていく登山客もいる。「この先には何があるのだろう」大阪府側の登山道に不案内だった私の、ちょっとした疑問だった。地図には、ここから500m先に黒栂谷道という林道があり、山頂に続く登山道も3本示されている。ならば、自分の足で確かめるしかないと、ゴールデンウィークに単独行。すると、予想もしない金剛山のお花畑に遭遇することができた。
 黒栂谷道入口にはゲートがあり、車の乗り入れはできないし、この間駐車場もない。ちなみに、次の3つのルートが山頂へと導いてくれる。
  @ 高畑道(車止め手前を、右に入ると登山口がある)
  A カトラ谷(林道とカトラ谷の出合より入る)
  B 林道終点〜セト〜青崩道(林道終点手前を左に入るとセトにとりつく登山口)

【カトラ谷】
 その金剛山有数のお花畑に出会えるのがカトラ谷ルート。5月の一ヶ月間には、ニリンソウ、イチリンソウ、ヤマブキソウ、ヤマシャクヤク、クリンソウなどが登山道及びその周辺を彩る。
 登山道の前半は、谷と交差しながら進むが、増水時などは荒れることも予想される。また、鎖場や梯子の箇所もあり、千早本道のような気軽さは禁物。また、ルートの分かりづらいところもあるが、マーキングをたよりに丁寧に道を選んでいけば、後半はルートのはっきりした登山道へととってかわる。ゴールデンウィークのまっただ中に登った際は、ポツポツと白い花がご挨拶をしてくれたのでカメラを向ける。まだ若いのか、ニリンソウの語源と異なり、一輪の花をつけたものが多い。やがて、数十メートル先に足を運ぶと、登山道を飲み込むかのようにグランドカヴァーと化したニリンソウの群生地がその両側に広がる。復路化した登山道の先は森が開け、登山客は、ニリンソウの草原を見下ろしながら、しばしの休憩をとったり少し早目のお弁当を広げている。
 2週間後に同じ道を歩いたが、真っ白な花は褐色と姿を変え、もはやかの面影はなかった。その代わりに、今度はヤマシャクヤクが見ごろとなり、登山道脇に彩りを添えている。折しも、里ではボタンの花が見ごろを終えようとしており、五條の金剛寺などは関西花の寺第二十三番霊場として、この時期ばかりは観光客を集める。ヤマシャクヤクもボタン科の仲間で、言われてみれば血縁の風格は漂う。
 また、ヤマシャクヤクと入れ替わるように、今度はクリンソウが見ごろを迎える。クリンソウの群生地は、ニリンソウの群生地の手前を、右にとった谷筋に見られる。その名の由来は、花茎を中心に放射状についた花の様が、五重塔のてっぺんにある九輪に似ていることだというが、鮮やかなピンク色といい、山野草とは思えない見栄えの華やかさがある。
 お花畑で随分寄り道をしたが、国見城手前にはヒノキ科のアスナロの大木があり、この辺の山では珍しい。葉裏の白い気孔の文様が、ヒノキはYの字に対して、アスナロはWの字となっているのが面白い。

【高畑道】
 カトラ谷でニリンソウにカメラを向けていると、「高畑道ではイチリンソウが見ごろで、1ヵ所群生地がありますよ」と教えていただいた。「では、帰りは高畑道にしよう」
 葛木岳山頂周辺は、ブナの原生林が広がり、金剛山地の中でも最も広葉樹林の多様性を楽しむことのできるエリアである。その多様性の襞は、青崩道や千早本道沿いにも伸びているが、高畑道を下る折にも、大木に育ったブナの林が見送ってくれる。やがて、右にスギ・ヒノキの人工林、左に広葉樹の二次林というおもしろいシルエットに代わり、やがて人工林の中の谷筋を下っていく。
 太陽光が差し込むところにはスミレの仲間やヒトリシズカも見つけることができ、お目当てのイチリンソウ群生地にも出会えた。ニリンソウとよく似るが、花は圧倒的に大きく、容易にその違いを見分けることができる。また、ニリンソウとは異なり、イチリンソウは崩壊の恐れがあるような谷に面した傾斜地を好むのだろうか。噴き出す汗を拭いながら、ひたすら頂上に向かって集中している登山客の視野には入らないかもしれない。実際、私の興奮などどこ吹く風で、何組ものグループは素通りしていった。
 カトラ谷も高畑谷も、ミソサザイの多い谷である。何百メートルかの間隔で別のミソサザイの縄張りに代わるのだろうか、そのさえずりは途絶えることがない。ミソサザイは、そのさえずりに似合わずとても小さな鳥で、切り株などの低い突起物の上をステージとして好んでいる。高畑道を下る途中、谷の水際に見え隠れする一羽を見つけた。この鳥は、川面に垂れるシダの裏や流木の影などに営巣する。この場所も営巣地に違いないとにらんだが、あいにくこの日はフィールドスコープを持ち合わせていなかったので帰路を急ぐことにした。

 
カトラ谷  
 
カトラ谷   カトラ谷
 
高畑道   高畑道
 
 
 
   

 
   

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