Nature Guide
                         くりんとの自然観察ガイド

           
   
 室生火山群の謎
兜岳から曽爾高原をのぞむ
亀山峠から鎧岳・兜岳をのぞむ

 「日本で最も美しい村」連合に登録している曽爾村は、奈良県内においては珍しい異国の風景が広がる。お亀池周辺の曽爾高原に身を置き鎧岳や兜岳を眺めれば、「奈良のアルプス」という形容は言い過ぎではないだろう。ただ、この地形は火山活動とその後の河川による侵食から生まれたもので、大陸の衝突による隆起と氷河による侵食によって形成された本家のアルプスとは異なる。よって、やっぱり「アルプス」という形容は適切ではないかもしれない。

 この地域の基盤岩は花崗岩や片麻岩であるが、約1500年前におこった激しい火山活動によって、一帯は火山灰に埋め尽くされた。これらの火砕流堆積物が熱と重みによって溶結凝灰岩となるが、激しい火山爆発は何度も起こり、最大400mの厚さの層ができた。
 その後、この台地を流れる河川によって凝灰岩は侵食され、現在の曽爾川を中心とした深い谷ができる。室生火山群最高峰倶留尊山(くろそやま)は標高1038m。あと、国見山1016m、住塚山1009m、古光山953、亀山849m、鎧岩894m、兜岩920mなどと、いずれも標高1000m前後の峰々であり、当時の火砕流堆積物によってできた平原が概ねこの標高であったことがわかる。
 さらに、屏風岩や鎧岩の中腹には、みごとな柱状節理が目視でも認識できる。柱状節理は、火砕流堆積物の冷却収縮に伴い、溶結した岩体が角柱状(六角柱)に切り離されることによって形成されたものである。鎧岩のものは、幾つかの地層になっていることが見てとれ、何回もの火山爆発があったことがここでもよくわかる。鎧岩や兜岩の登山道には、風化した凝灰岩が転がっており、石英・黒雲母・斜長石などの鉱物の粒が見て取れる。

 では、この地域を火砕流で埋め尽くした約1500年前の大規模な火山活動の火山はどこにあるのだろうか。これは長らく謎であった。ちなみに、曽爾高原のお亀池を火口と勘違いされる方も多いが、これは大規模な地滑りの跡で、崩壊してできた窪地に水が溜まったものである。この辺りは、溶結凝灰岩の下に、海が浸入していた時代の礫岩・砂岩・泥岩が分布しており、この堆積岩が地滑りを起こし馬蹄形滑落崖ができたと考えられている。
 近年、大和大峯研究グループによって、室生火砕流堆積物を噴出した火山は、大台カルデラではないかということがつきとめられた。これは放散虫化石による地層年代特定の研究が進んだ成果の1つで、現在、大台ヶ原に火山地形は見当たらないが、火山活動がつくった陥没構造と割れ目噴火の痕跡は見つかっているという。

【参考文献】大峰山・大台ヶ原山−自然のおいたちと人々のいとなみ−大和大峯研究グループ著/築地書館

柱状節理の見える屏風岩
 
鎧岩も凝灰岩 が浸食されたもの。何層にも見えるのは、複数回の大爆発があったゆえと考えられる。   鎧岩の凝灰岩

 
   

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