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旅をする昆虫 〜アキアカネ〜

 

アキアカネ(西大台2007.8.10.)

【アキアカネ】
 トンボ科アカネ属のアキアカネはいわゆる「赤とんぼ」で、狭義ではこの種だけを指して呼ぶ「赤とんぼの中の赤とんぼ」である。とまり方にも特徴があり、多くのトンボは翅を水平かあるいは閉じてとまるのに対し、アキアカネは翅をやや下げてとまる。秋に交尾をして産卵し、卵のまま越冬して春に孵化し幼虫(ヤゴ)となる。ヤゴは5月末から6月下旬に羽化し、やがて日中の気温が20-25℃程度の山地を求めて移動する。7〜8月の間山地で過ごし、通常秋雨前線の通過をきっかけに群れをなして平地に移動、11月頃まで交尾の季節を迎える。1年1世代。
 大台ヶ原はアキアカネの避暑地であり、ここにいる間はやや黄色味がかった姿で見られる。人なつっこい昆虫で、カメラの届く範囲で止まってくれるからシャッターチャンスは多い。さて、大台のアキアカネはどこから来てどこへ帰るのか。以前、ビジターセンターの職員が羽に印をつけて尾鷲方面まで追跡調査したようだが、今のところ追跡に成功していないらしい。

 
アキアカネの移動イメージ図   イチモンジセセリ


【イチモンジセセリ】
 チョウ目セセリチョウ科のチョウは、翅が小さい割に胴体が太く、ガの仲間と勘違いされやすいイチモンジセセリは、その名前のとおり、後翅裏の白紋が一文字に並んでいて見分けやすい。平地から山地まで生息域も広く、しかも年3〜4回成虫が羽化するので、大台ヶ原まで来なくても自分の家の近くでも見かけることができる。幼虫はイネツトムシと呼ばれ、イネ科植物の葉を食べ育つことから、水稲の害虫としても知られる。
 さて、そのイチモンジセセリだが、「旅をするチョウ」という一面がある。関東、東海、近畿地方などの暖かい場所で幼虫で冬を越え、春に成虫になると、北陸や東北に向かって北上し、秋になると南下する。8月末から9月にかけて増えたイチモンジセセリは、時には雲のような集団をなして、暖かい方向をめざすが、アサギマダラのように長距離の旅をするのではなく、移動距離はせいぜい23〜100kmぐらいの移動である。しかも1日のみ。この程度の南下では、アサギマダラのような明らかな移動理由が見当たらないことも多く、その理由はよくわかっていない。
【参考文献】石川県ふれあい昆虫館 通巻65号 2015.3.10