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テンナンショウ属の楽園

 
 

オオミネテンナンショウ
分布:静岡県・山梨県・近畿南部
葉は2枚で5個の小葉からなる。小葉は倒卵形〜楕円形。
花は葉よりも早く展開し、仏炎苞は紫褐色から帯紫色で、長さ6〜12cm。

 

ホロテンナンショウ
分布:奈良県・三重県
葉は1枚(まれに2枚)で、7〜13個の小葉が鳥足状につく。花の付属体は棍棒状。仏炎苞は濃紫褐色で白い条線が入り、先端は尾状に長く伸びる。仏炎苞の口辺部が内側に曲がってホロ状になっていることが名前の由来 。

 

キシダマムシグサ
分布:愛知県・近畿地方
付属体が棍棒状で、葉が鋸歯であるのが最大の特徴。仏炎苞は紫褐色で、オオミネテンナンショウに比べて先端は尾状に長く伸び る。ムロウマムシグサの別名もある。

 

ムロウテンナンショウ
分布:愛知県・福井県・近畿地方
花の付属体の先端がマッチの先みたいに丸く濃い緑に染まっているのが最大の特徴。葉は2枚で、小葉が7〜17個が鳥足状についている。

 サトイモ科テンナンショウ属のなかまは、生殖戦略について2つの際だった特徴がある。
 1つ目、ムサシアブミなど一部を除いてテンナンショウ属は雌雄異株(しゆういしゅ)であるが、栄養状態によって性転換する。種子から芽生え一定の大きさになるまでは無性、そしてある程度大きくなるとまず雄になる。さらに、一定上の大きさに育つと雌になるというわけだが、環境が悪く個体サイズが小さくなると、雌から雄に戻ることもある。
 テンナンショウ属の花は小さく、「仏炎苞(ぶつえんほう)」とよばれる筒の中にあって外から見えない。この筒の中には肉質の太い穂が一本あり、下部に花がついて「肉穂花序(にくすいかじょ)」と呼ばれる。穂の先端部分には花がなく、様々な形に変化してその種の特徴となっているが、これを「付属体」と呼んでいる。
 花びらのような仏炎苞は、花に寄ってきた昆虫を内部に閉じ込める働きをする。雄花の場合、仏炎苞の下部には小さな隙間があり、花粉まみれになった昆虫はそこから抜け出すことができる。しかし、雌花の場合、昆虫の這い出せる穴はなく、受粉した昆虫はそこで死に絶えることとなる。こうした忍者屋敷のようなトリックが、2つ目の特徴である。
 秋になると仏炎苞は枯れ、なかには真っ赤な実がトウモロコシ状となって顔をのぞかせる。また、テンナンショウ属の地下茎には芋ができ、デンプンと共にシュウ酸カルシウムという有毒成分が含まれる。しかし、同じサトイモ科のなかまのコンニャク芋がそうであるように、様々な工夫によって縄文人やアイヌの食文化に取り入れられてきた。中尾佐助氏は、大陸から伝わってきた照葉樹林帯共通の食文化としている。