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大台ケ原の森林衰退 −西大台の利用調整地区−

 

正木峠

【大台ヶ原の森林衰退】
 大台ヶ原の森林衰退の原因を、ニホンジカだけに押しつけるのは人間の傲慢である。彼らの増加を促した背景には、人為的な要因や気象の変化がある。昭和36年の大台ケ原ドライブウェイの開通以来、長期間にわたる車の排気ガスや利用者の自然環境への影響も考えられる。また、世界的な規模で懸念されている地球温暖化や酸性雨の影響も無視できない。
では、なぜ近年になってニホンジカが増えたのか。以下のような要因が考えられている。
@遠因をさがせば、天敵であったニホンオオカミが絶滅してしまい、捕食されることがなくなった。
A昭和30年代の伊勢湾台風や第二室戸台風による倒木によって、林冠が解放されミヤコザサが拡大し、ニホンジカの好適環境が増えた。
B昭和30年代、(ニホンジカの生息地であった)周辺の山林でも森林の伐採やスギやヒノキの造林が盛んに行われ、一時的な下層植物の増加によって個体数が増えた。しかし、その後そうした人工林が成長するにつれ、増えたニホンジカはこうした奥山に移動し、彼らの餌場を求めるようになった。
C近年の複合的な要因による大台ヶ原の森林の衰退が、ニホンジカにとってはミヤコザサといった餌場が増え、高密度安定化をはかっている。

【大台ヶ原のニホンジカの頭数】
1982年 生息密度約22.2頭/ km2
1993年 生息密度約39.5頭/km2(東64.3,西11.3) ,合計192頭  (※90年代がピークか)
1996年 生息密度約30.9頭/km2(東46.1,西18.1) ,合計175頭
2005年 生息密度約14.4頭/ km2 (※1990年代のピーク時よりは減少傾向にあるが,依然高い密度)

※ 自然植生への影響が少ないニホンジカの生息密度は3〜5頭/ km2とされているが、当面は約10頭/ km2を目標にワナ、麻酔銃などによる個体数調整が計画されている。

◇引用文献:『大台ケ原の自然誌―森の中のシカをめぐる生物間相互作用』柴田叡弌,日野輝明・編著

【大台ケ原自然再生推進計画】
 こうした大台ヶ原の現状に、昭和61年(1986年)から環境省の保全対策も始まり、平成17年(2005年)には「大台ケ原自然再生推進計画」が策定された。
@モニタリングとして、防鹿柵を設置してのニホンジカの影響の調査や樹木の追跡調査、トラップ設置による種子量調査などが行われて、実態の把握に努めている。
Aニホンジカの樹皮の皮剥ぎを防止するための金網の巻きつけや個体数調整のためのニホンジカの捕獲が行われ、直接的なニホンジカへの対応がなされている。
B西大台が自然公園法に基づく「利用調整地区」に指定され、2007年9月1日より、主に1日あたりの立ち入り人数制限など入山規制が行われる。立入りにあたっては、事前手続きと事前レクチャーの受講が必要となる。

 
防鹿柵の中のミヤコザサが本来の姿(苔道)   トウヒの稚樹も育つのだが(正木ヶ原)

【西大台利用調整地区】
 「利用調整地区」とは、将来にわたり良好な自然環境を保持し、より質の高い自然体験の場を提供するため、立入り人数等を調整する区域のことで、西大台が全国で初めて指定を受け、2007年9月1日より適用されている。以下、西大台利用調整地区に入山するための申請手順である。
 @予約(電話で可。)
 A立入申請(FAXで申請書を送信し、手数料1人1,000円を金融機関に振り込めば、数日前でも可。ただし、申請書は後日郵送すること。)
 B立入認定証の交付(当日、大台ビジターセンターで交付。)
 C事前レクチャー(当日、大台ビジターセンターで。1回受講すれば、その年度は以後免除される。))
 D立ち入り
 これらは、環境省に代わって上北山村商工会が申請窓口となっており、1日当たりの立ち入り人数の制限内であれば、天気をにらみながら数日前の申請も可能である。