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大台ケ原のツクシシャクナゲ事情

日出ヶ岳山頂付近のツクシシャクナゲ
  特徴
キバナシャクナゲ 淡い黄色の花
(北海道・中部地方以北)
アズマシャクナゲ 花弁は5裂、雄蕊は10本
ハクサンシャクナゲ 花は白から淡い紅色
葉柄と葉の交点が直角
ホンシャクナゲ 花弁は7裂、雄蕊は14本
葉裏は銀白か灰褐色の軟毛
(※ツクシシャクナゲの亜種)
ツクシシャクナゲ 花弁は7裂、雄蕊は14本
葉裏は赤褐色でビロード状の密毛
ホソバシャクナゲ 葉が細い
紅紫色または白色
( 静岡県・愛知県/絶滅危惧II類)
ヤクシマシャクナゲ 花は淡い紅色
(屋久島)
 
 

シャクナゲの分布域

 シャクナゲの自生地を大きく分けると、東日本はハクサンシャクナゲとアズマシャクナゲ、西日本はツクシシャクナゲとホンシャクナゲとなり、地域限定でキバナシャクナゲやホソバシャクナゲ、ヤクシマシャクナゲなどが見られる。シャクナゲの愛好家は多く、西洋シャクナゲも含め園芸品種が多いのでややこしいが、日本に自生するものなら見分け方はさほど難しくない。
 大台ヶ原をはじめ紀伊山地の高山に多いのはツクシシャクナゲ。ホンシャクナゲとの見分け方は、褐色(オレンジ色に近い)の毛を厚く密生するツクシシャクナゲに対して、ホンシャクナゲは銀白あるいは灰褐色で毛が少ない。花の色は同じ種でも変化に富んでいるので、まず見分けのポイントにはならない。
  東大台では、日出ヶ岳山頂付近と大蛇ー、シオカラ谷付近にツクシシャクナゲが多い。大蛇ーは東の川に突き出た岩礁で、そこまでのアプローチは尾根筋、表土は薄く乾燥気味で見るからにやせている。湿潤性の高木なら避けるそんな場所に自生地を広げたのがツツジ科、そしてシャクナゲの仲間というわけだ。したがって、ツツジの仲間には地面を突き刺すような大きく太い根はなく、細かく浅い根が表層 を這うようにわずかな土を掴んでいる。
 開花の季節だが、GW明けではまだ早い。その頃は、やっと新緑の季節を迎え、野鳥たちがペアリングに子育てにとけたたましくさえずっている。連休ということで登山客は集中するが、まだ襟裳岬。「何もない春です。」(笑)しかし、登山客もよく心得たもので、5月下旬の休日ともなると、駐車場から車はあふれ、ドライブウェー沿いの路肩駐車が見られる。そう、ツクシシャクナゲが満開なのだ。
 シャクナゲ目当ての登山客は、大蛇ーからシオカラ谷を周遊するコースに集中するが、意外な穴場がある。日出ヶ岳山頂付近にもツクシシャクナゲは多い。しかし、特別保護地区ゆえロープで規制線をはり保護している。多くの登山客は、登頂の喜びや尾鷲湾を見下ろす絶景に満足してUターンするが、少し大杉谷方面へ下ってみよう。5〜10分ほどでいい、登山道沿いに東大台一のシャクナゲ群生地に出会うことができる。そこは、山頂の喧噪とはうってかわった静寂で、忙しく密を集めるマルハナバチの羽音は最大の騒音である。
ちなみに、東大台とひとくくりにしたが、日出ヶ岳山頂付近、大蛇ー、シオカラ谷は、それぞれ開花期(見頃)は微妙に異なるので、あきらめないこと。経験上、大杉谷へ下り坂が一番遅い。

 
7裂したツクシシャクナゲの花弁  
 
ツクシシャクナゲの葉裏は赤褐色でビロード状の密毛  

シオカラ谷の登山道