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カモシカ

偶蹄目ウシ科

 
 
百合ヶ岳(2021.AUG.)   猿谷(2007.MAR.)


 新芽が息吹く前の一番食料がない時期か、こんなものまでむさぼったらしい。しばらくにらみ合ったままこう着状態が続いたが、こうした場合、カメラを向けたとたん大概逃げる。

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 1年中同じ行動圏をもつことから、一度出くわせば、同じ場所で観察できることが多い。私のよく行く大塔町(五條市)でも、3か所ぐらいニホンカモシカの出没地を知っている。ニホンジカのように、目を合わせる間もなく「ピュ〜ッ」と鳴いて逃げ去るようなことはなく、至近距離で突然遭遇しても、お互い仁王立ちとなって、すぐには逃げない。ただ、カメラを探している間には、さすがに行方をくらます。したがって、ある程度の距離を保っているのなら、望遠レンズさえあれば観察のしやすい動物だろう。そうしたゆったりとした行動から、「カモシカ時間」や「森の哲学者」という言葉も生まれたが、銃をもった人間にとっては組みやすい相手となり、一時期、数を減らしたのかもしれない。

  ニホンジカと比較すると、こちらはウシ科の動物で、雌雄共に同形の角をもち生えかわらない。また、頭胴長70〜85cm、体重30〜45kgと、シカに比べればずいぶん小さい。少し前までは、生息環境も、高山の岩場にすむ粗食型の動物として、ニホンジカとすみ分けていたかのように考えられていたが、東北地方では密度も高く、海岸近くでも見られるようだ。
 全国のニホンカモシカは、日本特産種で学術的にも貴重種であることから、昭和30年に特別天然記念物に指定されている。
  ニホンカモシカは1年中同じ地域を行動圏とし、雌雄それぞれ直径500m〜1kmの縄張りをもつ。目の下には、眼下腺と呼ばれるピンポン玉大の分泌腺をもち、あちこちにこすり付けてはマーキングを行う。基本的には単独生活だが、10〜11月の交尾期には一夫一妻制を形成する。7か月の妊娠期間を経て5〜6月頃に1頭の子を出産し、母親が連れ立って育てる。したがって、2頭連れのニホンカモシカを見たときは、母子連れか、交尾期のペアであることが多い。
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