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野鳥一期一会

 
         
         

磯を忘れたイソヒヨドリ 

スズメ目ツグミ科

金剛山麓(2011.2.25.)

 「ホイピーチョイチョイ、ツツピーコー」、わが家の寄棟造の屋根のてっぺんから、とても美しいさえずりが聞こえてくる。家から飛び出してその姿をとらえると、頭から背・胸にかけて青く、胸が赤い。図鑑で調べると「イソヒヨドリ」に姿形がよく似ていたものの、「イソ」のつく名前に惑わされ、一頃「アカハラ」と誤認したこともあった。いずれにしても、我が家の「3銘鳥」である。
 ある日、近所の小学生が、イソヒヨドリの雛を拾ったと騒いでいる。民家の屋根の隙間に作った巣から、落ちたものらしい。「野鳥は人の手で育てられないから、巣に戻した方がいいよ」とアドバイスしたが、何度戻しても落ちてしまうということだった。とりあえず段ボールの巣を与えられた雛だが、心配そうな親鳥の姿が遠巻きに見え隠れしている。すると、、翌日、その小学生餌付けに成功したという。ペットショップで売っているミールワームを割り箸で与えたら食べたらしい。さらに、先の親鳥もベランダに置いた段ボール内の雛に餌を与えに来たというのだ。人間の手に触れた雛に、親鳥は近づかないという話を聞いたこともあるが、小学生の試みはそんな先入観を簡単に打ち破ってしまう。やがて、雛は親鳥と共に巣立っていったというハッピーエンドである。

 その名の通り、海辺の留鳥らしいが、近年は、河川に近い内陸部や時には海岸から離れた城壁やビル街でも見かけることができるという。今年も、イソヒヨドリがわが家の寄棟造の屋根のてっぺんに現れ、「ホイピーチョイチョイ、ツツピーコー」とさえずっている。少年から巣立ったイソヒヨドリかどうか確かめようもないが、私たちはあのイソヒヨドリだと信じることにしている。

 雄は頭から背・胸にかけて青藍色、腹は赤褐色。雌は上面が灰黒褐色、腹は褐色のうろこ状斑。
 全国の海岸の岩場に留鳥としてすむ。